アパート・マンションの防犯対策で物件価値を高めて入居率を改善
アパート、マンションの防犯対策は、入居者の安全や犯罪の抑止効果、物件の資産価値の向上、空室リスクを避ける効果など、多くのメリットがあります。
今回は、入居者の防犯意識から、犯罪の傾向と防犯対策、助成金を利用した防犯対策の導入などをご紹介します。
アパート、マンション入居者の防犯意識は?
埼玉県が平成30年に行った防犯意識調査では、約36%の方が「地域の治安について不安を感じている」と回答しています。
防犯カメラや防犯ガラス、警備会社との契約など、既に防犯対策を行っている方は約67%おり、潜在的に高い防犯意識を持っている事が分かります。
また、全国賃貸住宅新聞による「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても決まる」の結果では、エントランスのオートロックや、防犯カメラ、モニター付きインターホンなど、複数の防犯対策が10以内に入っています。
潜在的に入居者の防犯意識は高く、防犯対策がされていないアパート、マンションは、多くの見込み客を取り逃している可能性があります。
アパート、マンションで最も多い犯罪は?
アパート、マンションでは、空き巣、窃盗、放火、のぞき、ポスト荒らしなど、様々な犯罪が発生しています。
アパート、マンションで最も発生している犯罪が、空き巣、住宅窃盗などの侵入犯罪です。
侵入犯罪は年々減少傾向ですが、組織・グループによる侵入犯罪が増加しており、単独での侵入犯罪よりスピーディーで手口も巧妙になっています。
そのため、アパート、マンションの防犯対策は、組織・グループによる犯罪を想定した防犯対策が重要になります。
最も多い侵入犯罪の侵入ルートは?
警視庁が発表しているレポート「侵入犯罪の情勢」では、窓からの侵入が最も多く、次に玄関口からの侵入と発表しています。
窓からの侵入は「打ち破り」や「こじ破り」と呼ばれるガラスの一部を割って侵入する手口や、ガラスをガスバーナーで加熱して破損させる「焼き破り」といった手口で侵入されます。
玄関のドアや錠が古い場合は、ピッキングやサムターン回しなど、古くからある手口で侵入されてしまいます。
侵入犯罪の多くが窓と玄関から侵入しているため、窓と玄関の防犯対策だけでも大きな防犯効果が期待されます。
アパート、マンションの効果的な防犯対策
防犯シールや戸締まりなど、簡単な防犯対策は入居者にお願いするとして、管理会社や組合、物件オーナーでしか行えない防犯対策があります。
現在は、安くても優れた防犯効果があり、設置や導入も簡単にできる防犯商品が多く開発されています。
既存のアパート、マンションでも導入しやすく防犯効果が高い対策をご紹介いたします。
窓ガラスに防犯フィルムを貼る
窓ガラスに貼るだけで、割れないように耐久性を上げる防犯用の特殊なフィルムです。
激しく何度も叩いて強い衝撃を与えないと割れないため、衝撃音が響き渡り、侵入時間もかかるため、高い防犯効果があります。
2000年以降はガラスを割って侵入するのではなく、ガスバーナーで窓ガラスを焼いて侵入する「焼き破り」という手口が増えていますので、耐火性のある防犯フィルムが必要となります。
防犯フィルムの中でも、CPマークが表示されたCP認定品の防犯フィルムがお薦めです。
CPマークは、警察庁・国土交通省・建物部品関係団体から「耐久性・耐火性が優れ、高い防犯効果がある」と認められた商品にだけ表示されるマークです。
防犯フィルムは入居者が用意することは少なく、安価な防犯フィルムでは防犯効果も劣ります。
安心・安全なアパート、マンションとして物件価値も上がるため、組合や管理会社が対策することをお薦めします。
防犯ガラスに取り替える
防犯フィルムに比べて、防犯ガラスは導入費用がかかりますが、耐用年数が約10年の防犯フィルムに対して、防犯ガラスの耐用年数は約20年です。
設置費用、取替費用などのコストも勘案すると、価格差はそれほどないケースもあります。
耐久性・耐火性は、防犯フィルム、防犯ガラスどちらも優れた強度があり、防犯対策として問題はありません。
ただし、防犯ガラスは割れにくいため、火災や災害の際にガラスを割って外に逃げることが困難になります。
このため地域によっては3階以上の物件に高い強度の防犯ガラスの設置を禁止している自治体も存在します。
玄関ドアの錠の交換。電子錠・スマートロックを導入する
玄関ドアや錠が古い場合は、ピッキングやサムターン回しといった古い手口で侵入されてしまいます。
簡単にできる防犯対策として錠の交換が挙げられますが、電子錠・スマートロックの導入がお薦めです。
すでに海外では電子錠・スマートロックの普及が広がっており、いずれ日本のアパート、マンションでも電子錠・スマートロックが一般的になる事が予想されます。
電子錠の多くは鍵穴が無いため、ピッキング被害の心配はありません。セキュリティも暗号化され安全性が保たれており、施錠記録もログとして残るため「いつ誰が出入りしたか?」を把握することもできます。
また、スマートフォンから鍵を施錠できるので、鍵の閉め忘れ防止に繋がります。
耐久性、耐火性も高く、火災時には自動的にロックが外れるなど、入居者の利便性と安全性を兼ね備えた電子錠・スマートロックが多く発売されています。
玄関と窓に補助鍵をつける
補助錠とは、もともと設置されている鍵に、補助として追加で鍵を取り付けることを指します。
補助錠は、主に玄関ドアのピッキングを防ぐために設置されることが多いですが、高いところに設置して小さな子どもが外へ飛び出すのを防止できるというメリットもあります。
補助鍵は工事不要で簡単に取り付けることができるので、業者に依頼する必要もなく比較的導入しやすい防犯対策です。
玄関ドアと窓の両方に補助錠を設置すれば、防犯対策をより高めることが可能となります。
アパートやマンションで設置できる補助鍵は、「外付けタイプ 」「内付けタイプ 」「カードキー式 」「暗証番号式」の4つの種類があります。
特におすすめなのは、ピッキングへの不安を取り除くことができ、解錠するときに余計な手間がない「カードキー式」です。
モニター付きインターホンを導入する
モニター付きのインターホンを導入するのも、効果的な防犯対策の一つです。
インターホンが押されていなくても、玄関ドアの前で異変があればモニター付きインターホンで様子を確認できます。
また、子どもが留守番しているとき、モニター付きインターホンがあれば不用意にドアを開けなくてもいいことから、ファミリー向け物件のマンションでは定番の設備となっています。
全国賃貸住宅新聞調が行った「この設備がなければ入居が決まらない」設備ランキングでも「モニター付きインターホン」が、ファミリー向け物件で1位、単身者向け物件で2位となっており、防犯対策、空室率対策にも効果的です。
最近では「ワイヤレスドアモニター」と呼ばれる配線なしで設置できる防犯用ドアモニターもあるので、後付けしたいと考えている場合にも費用を抑えて導入することが可能です。
防犯カメラを設置する
アパート、マンションに防犯カメラを設置することは、入居者の安全を維持するだけではなく、物件の資産価値を上げることにも繋がります。
防犯カメラを設置することで、犯罪の抑制、資産価値向上による入居者へのアピール、空室対策などのメリットがあります。
最近は、大規模な設置工事が不要で、設置場所の自由度も高いネットワーク型の防犯カメラが主流になってきています。
SIMカードを利用できるタイプであればインターネット回線の工事も不要で、ソーラーパネルが付いたタイプであれば電源コードも不要となります。
防犯シャッターを導入する
防犯シャッターは、主に都心部のアパート、マンションの1階の窓に取り付けられているものです。防犯面以外にも、防音性や自然災害時にも役立つので設置する不動産会社が増えています。
防犯シャッターを導入することで、空き巣などの侵入経路である窓から室内に侵入されにくくなるという効果があります。
また、女性のひとり暮らしでも室内を覗き見される心配が減るので、1階でも入居するハードルが下がる傾向があります。
防犯優良マンション認定によるアパート・マンションのメリット
防犯優良マンション認定制度は、防犯性能に優れたマンションを消費者に提供するため、各都道府県の認定機関が、公益財団法人全国防犯協会連合会、 公益社団法人日本防犯設備協会の2公益法人が、公表している認定基準をベースに適合性を審査し、 これにクリアしたマンションに対して認定証を付与して公表する制度です。
防犯優良マンション認定制度は、主に3階建て以上の物件が対象となっており、駐車場の防犯を対象とした「駐車場登録制度」もあります。
駐車場は屋外、屋内どちらでも対象となっていますので、マンションの地下や1階スペース、屋外に駐車場があれば、防犯対策をすることで駐車場登録制度にも認定されます。
防犯優良マンションに認定されると、登録証プレートの交付と、登録認定マークが授与されます。
登録認定マークは広報活動の使用が許諾されており、賃貸物件検索サイトや、不動産仲介業者への物件資料や間取り図などにも活用することができ、防犯意識の高い入居希望者へアプローチしやすくなります。
補助金を利用したアパート、マンションの防犯対策
今回ご紹介した防犯フィルムや防犯ガラス、電子錠、防犯カメラなどは、自治体の防犯対策や空き巣被害対策の助成品目に該当されていることが多く、補助金を利用して防犯設備を導入することができます。
例えば東京都港区の「住まいの防犯対策助成事業」で助成金対象となっている主な品目には下記があります。
- 防犯性能の高い錠の取付け又は交換
- 防犯フィルムの貼付け
- 防犯ガラスへの交換
- 補助錠の取付け又は交換
- 防犯カメラの取付け又は交換
今回紹介した防犯対策では防犯シャッター以外は、既存のアパート、マンションでも殆ど設置可能な防犯設備です。
助成金も利用でき、比較的安い費用で導入できるため、未設置の場合は空室リスクを避けるためにも検討したい防犯対策です。